近年、中小企業を中心にM&Aが盛んに行われ、その対象とする企業もさまざまな分野におよんでいます。
ただ、当初予想したほどの効果が得られず、失敗してしまう確率が意外と高いのが現実です。これにはいろいろな原因が考えられます。そこで、こうした原因について、M&Aプロセスに沿って見ていくとともに、その対応策、M&Aを成功させるカギについてもふれてみたいと思います。

M&Aが失敗する原因とその対応策

M&Aの失敗原因を、その手続きの流れに沿って見ていくことにします。

M&A戦略策定

M&Aは、経営戦略、事業戦略上の目的を達成するための手段です。M&Aプロジェクトがはじまると、この点が曖昧になり「手段の目的化」といった状況に陥りがちです。何のためにM&Aを実施するのか、そのためにはどういった手段を取るべきか、その成果は、といった重要な視点が欠け、たとえ成約しても、その後の事業統合がうまくいかず、結果として失敗に終わってしまうのです。
まず、M&Aの目的を明確にしておくこと、M&Aの各プロセスの過程で、常に、何のためにM&Aを行うのか、そのためには今何をすべきかといった疑問、問題意識を常に忘れずに手続きを推し進めることが大切です。

アドバイザーの決定

M&Aは複雑な手続きで、高度な専門知識、ノウハウなどが必要です。そのため、売手側・買手側企業だけでM&Aを進めていくと、交渉段階でブレイクしてしまいます。そこで、M&Aアドバイザーなどに依頼することになります。ただ、このM&A事業者選びを中途半端に行い、所期のM&A目的が達成できず、失敗に終わってしまう事例が少なくありません。
M&Aアドバイザーなどの事業者との無料相談を通して、複数の事業者を比較検討します。その際のポイントは、M&Aに対する基本的な考え、スタンス、誠実さ、そして自社とのマッチングなどです。

M&Aスキームの決定とバリュエーション

M&Aスキームやバリュエーションは、いろいろなものがあり、内容も高度で複雑です。そのため、M&Aアドバイザーや税理士、弁護士などの専門家に丸投げしてしまう経営者が多いものです。その結果、M&Aが本来の目的からかけ離れたものになり、期待した効果が得られないということになってしまうのです。
M&Aスキームについては、中小企業では「株式譲渡」や「事業譲渡」が多用されるため、これらのスキームについては事前に理解しておくこと、バリュエーションも財務情報だけでなく、非財務情報も活用した、合理的な売却価格を算定できるような視点を、あらかじめ持つことが必要です。こうした地道な作業がM&Aの成功率を高めるのです。

トップ面談・交渉

トップ面談や交渉は儀礼的なものではありません。今後のM&Aの成否を左右する重要なフェーズです。
ここで突然無理な条件を相手側に突きつけ、その結果、相手側が不審感を持ってしまい、その後の交渉が難航し、ブレイクしてしまうこともあります。
面談では、双方の価値観や経営理念を確認し共感を持つ、交渉では相手側の立場を尊重しながら進めることなどによって、M&Aが成功する可能性も高まります。

デューデリジェンス(DD)

デューデリジェンスは今まで提供された売手側情報を精査するものです。ビジネス、税務、法務、労務、ITなど多岐にわたります。これらを全部調査しようとすると、内容の浅い儀礼的なものに終わってしまい、その後、簿外債務、訴訟問題が表面化し、交渉が決裂してしまうこともあります。そのため、ビジネス、税務、法務など主要なものに絞って精査し、その後の手続きがスムーズにいくよう配慮する必要があります。

最終譲渡契約(クロージング)と事業統合(PMI)

通常、最終譲渡契約締結日と決済によるクロージング日は一致しません。この間に生じる手続き上のトラブルから、また、デューデリジェンスでは発見できなかった簿外債務などが原因で成約できず、ブレイクすることがあります。こうした事態を回避するため、前もって最終譲渡契約の中にこうした場合の対処法を盛り込んでおくことが重要です。
事業統合(PMI)も、とりあえず成約したが、その後何をやってよいのかわからず、本来の経営目的、事業目的が達成できず、結果としてM&Aが失敗に帰すといったことになります。戦略としてのM&Aの目的を常に意識し、事業統合が本来の目的達成のためのスタートであるといった意識が大切です。
また、統合にあたっては、相手側企業の従業員への配慮も必要です。事業統合上必要なキーパーソンである人材が流出してしまっては元も子もありません。

M&Aで失敗する確率は、かなり高いものです。そのため、あらかじめ手続き上生じる失敗原因を把握し、その対応策をとることが重要です。