上場企業による大規模なものから、中小企業、小規模事業者によるものまで、M&Aが盛んに行われるようになりました。
ただ、その成約率、成功する割合はというと、思ったほど高くありません。M&Aの先進国である欧米諸国でも、5割程度、我が国に至っては、2〜3割ほどにとどまっています。
これにはさまざまな原因がありますが、そのひとつにデューデリジェンス不足があります。デューデリジェンスとは、買収対象企業から提示された資料などの信ぴょう性を精査するもので、M&Aプロセスの中でも非常に重要なものです。そこで、このデューデリジェンス不足が招くM&Aの失敗について、その対策とともに見ていきたいと思います。

デューデリジェンスの内容

デューデリジェンス不足によるM&Aの失敗について検証する前に、デューデリジェンスについて見ておきましょう。

デューデリジェンスとは

デューデリジェンスとは、トップ面談・交渉そして意向表明、基本合意のあと、今まで売手側企業から提示された資料、データを買手側企業が、公認会計士や弁護士といった専門家の協力を得て行う調査です。今後発生するかもしれないリスクの洗い出しなど、その対応策を精査する一連の手続きです。
ここで問題がなければ、最終譲渡契約からクロージングへと進んでいきます。また、問題が出てくれば再度交渉を行い、内容の見直し、あるいはM&Aを止めるなどの判断をするため、M&Aプロセスの中でも特に重要なものです。

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスにはさまざまなものがありますが、主に次のようなものです。

ビジネスデューデリジェンス

売手側企業による事業計画を買手側企業が精査し、売却希望価格算定のベースとするもので、デューデリジェンスの中でも重要な位置付けになっています。

財務デューデリジェンス

財務諸表が適切に作成されているかの調査で、こちらも売却希望価格算定の基礎となります。

法務デューデリジェンス

売手側企業が締結する契約内容に、買手側企業にとって不利となる条項はないかの調査です。

税務デューデリジェンス

過去の確定申告の中に、追徴課税の対象となるものはないかを調査するものです。
そのほかに、ITデューデリジェンス、環境デューデリジェンス、知的財産デューデリジェンスなどがあります。

デューデリジェンス不足によるM&Aの失敗とその対策

デューデリジェンス不足が招くM&Aの失敗とその対策としては、次のようなものがあります。

M&A担当者の認識不足による失敗の回避

デューデリジェンスはM&Aの成否を左右する重要なプロセスです。また、デューデリジェンスを含めM&Aは時間とスピードが重視されます。こうした基本的なことに対する認識がないと、だらだらとデューデリジェンスを行い、その間に企業の業績が悪化し不利な条件で契約することになったり、M&Aそのものがブレイクしてしまうといった事態を招くおそれがあります。
M&Aを計画をする段階で、M&Aの知識を持った者を担当者とするか、前もってM&Aについて学習させるといった対策が必要です。

デューデリジェンスの簡略・省略化による失敗を回避

デューデリジェンスは限られた時間の中で多くのコストと労力が必要なため、担当者の認識不足もあって、その対象範囲を狭くしたり、専門家に依頼せず、自分たちだけで実施したり、あるいはデューデリジェンスそのものを省略してしまうことがあります。その結果、さまざまなリスクが表面化し、対応できずにM&Aが途中でブレイクしてしまうということになります。
最低限必要なデューデリジェンスとして、ビジネス、財務、法務、といったものには、相応のコスト、労力が発生することを想定し、そのためにはM&Aを開始するまでに、引当金のような形で必要コストをプールしておくことなどの対応が大切です。

依頼する専門家への対応を誤らない

公認会計士、弁護士といった専門家が皆、M&Aのプロといったわけではありません。デューデリジェンス経験に乏しい専門家へ依頼すると、発見できる問題、想定されるリスクの洗い出しなどができず、思わぬリスクの発生から、その後の手続きが難航したり、最悪交渉が中断してしまいます。
また、経験ある専門家ということで丸投げしてしまうと、かえってコストや時間がかかってしまうこともあります。デューデリジェンスの専門家は、M&Aアドバイザーなどに紹介してもらい、依頼することが効果的な方法です。

デューデリジェンスは、M&Aの成否を左右する極めて重要なプロセスです。そのためM&A担当者は、その重要性を十分認識するとともに、専門家の協力を得ながら、限りある時間、予算を効果的に活用し、調査することが重要です。